フィリピン留学恋愛ドラマ「韓国人の女の子に告白してフラれた話」
これは韓国人の女の子に出会い告白してフラれるまでの記録です。ひかないでくださいね笑。少し誇張して書いてます。フィリピン留学のはかない恋愛劇場をお楽しみください。
平日外出禁止の小さな世界である寮付きの語学学校では、あらゆる出来事が短い期間で巻き起こります。あのコは彼が好きだとか、誰が誰とキスしたとか、いじめが原因で誰かが帰国してしまったとか。勉強がトッププライオリティであるとわかっていても、非現実的とも言えるこの蠱惑的な環境に日々惑わされずにいるのはなかなか大変なことです。いっそのこと巻き込まれてみるのもいいかもしれません。その過程で英語も学べるかもしれないし、何か別のものを得るかもしれません。たいていフィリピン留学は一生に一度ですから。
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今思うと恵まれていたんだと思う。僕は語学学校「パインス」に到着した月はスパルタスピーキングクラスのレベル7に割り振られた。4人のグループクラスで僕以外はみんな女の子。韓国人の女の子2人ともう1人は日本人の女の子だ。翌月以降のグループクラスではなんとメンバーが全員男だった悲劇を考えると、最初の月はある意味ハーレムだっとも言える。しかもみんな美人でさらに可愛かった。
グループクラスにひときわ地味な韓国人の女の子がいた。いつもジャージで大きな眼鏡、化粧っ気もない。でも優しい子だ。ここではそのコを「J」と呼ぶことにしよう。その時僕は何も思わなかった。だが、時がたつにつれて彼女の魅力に引き込まれていく。
最初に彼女のキュートさに気づいたのは週末に数人でセカンドハンドショップに行った時だ。Jは短いショートパンツで眼鏡も外しコンタクトレンズで登場した。メイクは彼女を小さくて愛らしい表情に変えていた。僕は、ずるいよと思った。かわいいじゃないか、しかも僕好みのピカチュウ似じゃないか、と。
韓国人の女の子は好んでタイトなショートパンツを履く。これを知った時フィリピンに来て本当に良かったと思い、また韓国のカルチャーに心から感謝したものだった。
レベル7は純粋に楽しかった。クラスでは英語を楽しく勉強できるよう先生たちが工夫を凝らしていた。例えば、1人がある単語の意味を説明して他の生徒がその単語が何かを当てあったり、ボードゲームをしたり、罰ゲームがあったり、三つの発言のうち一つの発言だけが本当でそれを見抜き合ったり、そんなふうにとにかく生徒たちの仲が良くなるにできていたし、英語の楽しさを知るには最適な時期だったと思う。
あるゲームをした時、罰ゲームで顔にラクガキを描き合うことになった。Jが負けた時、僕はJの顔にネコのようなヒゲを描くことにした。指で彼女の顎を支えヒゲを描こうとすると、彼女は目をつむった。・・・このままキスができるかもしれない。できるかバカ!周りに先生と他の生徒がいるわ!と全力で自制した時、彼女にかなり惹かれている自分に突然気づいてしまったのだった。
クラブ「スペード」は時に留学生の僕らを変えてしまう。僕なんかこの時生まれて初めてクラブというものに行ったのだった。日本では行ったことが無かったのだ。けたたましい音楽に身をゆだね、顔を1ミリほど近づけないと会話ができない状況では何かが起きないはずがない。いや僕には何も起こらなかったんだけど。
一緒にいた友達で、初めて知り合った大学生同士がイチャイチャし始めた。男の子は女の子を後ろから抱き締め、曲に合わせて頭を振っている。女の子もまんざらでもなさそうだ。なぜだ、なぜそういうことができる?と僕は心の中でヨダレを流しながら見つめていた。その彼らの手前でJが踊っているのを見つけた。彼女のセクシーなダンスに完全に釘づけになった。小さい体ながら蛇のごとく腰をクネクネと動かしている。上手いと思った。キュートでセクシーでピカチュウイッシュ(pikachuish、ピカチュウ似)。僕はもう完全にJのとりこになっていた。
たまに彼女と学校で卓球をした。バギオで一番卓球がうまいとうそぶく僕を小馬鹿にするJを容赦なく左右に振り、一所懸命ボールを返そうと跳びはねている姿を見ると、ますます彼女がかわいく見えた。僕に勝ってキャッキャと嬉しそうに笑っている姿を見た時はなおさらだ。僕が負けた時には缶コーヒーをおごった。コーヒーを飲みながら、美しい島「パラワン」に一緒に旅行に行く約束を立てた。Jに彼氏がいることは知っていた。共通の韓国人の男友達が彼女から聞いたらしく教えてくれた。でもそんなことは気にならなかった。
3カ月が過ぎた頃だろうか。Jを含めみんなでサンフェルナンドへ行った。バギオから一時間半ほどで行けるビーチだ。メンバーは日本人と韓国人以外にカンボジア人と中国人、フィリピン人も含めた多国籍な構成だ。10人くらいはいたと思う。この日、本当にたくさんの事が一度に起こった。ビーチと酒と暗闇、ロマンスが起こる上でこれ以上の舞台は無いわけで。浜辺でバーベキューをしながらみんなずいぶんと酔っぱらっていた。
まず、カンボジアの男の子が日本人の女の子に告白して付き合うことになった。次に、別の日本人の女の子が中国人に無理やりキスされた。これは後でわかったことだけど。
そして僕だ。突然誰かがキスコールを始めた。僕とJのために。Jは最初こそ嫌がっていたけれど、やがて僕のヒザに馬乗りになりキスをしてくれた。1分は続いたと思う。驚いた…想像以上に長くて熱い濃厚なキスだったからだ。そしてJは立ち去った。みんなが、追った方がいいよ、と言うので、あわてて周辺を探したら電信柱の下で泣いているのを見つけた。その時はなぜ彼女が泣いている理由が全くわからなかった。僕はとりあえず謝って、でも、気持ちを伝えるべきだと思い、告白に踏み切った。
僕「er, I’m really sorry about what I did…but actually I like you a lot, er I mean I love you.」
彼女は僕の言っていることが理解できないようだった。というかかなり酔っ払っていた。
J「Ok I like another guy in school…even though I have a boyfriend in Korea.」
僕「What?! what do you mean?! what are you talking about…?」
どうやら韓国にいる彼氏以外に好きな人が学校内にいるということだった。そして僕はその彼が誰かを聞き出した時、唖然としたのだった。Jのことについてよく相談していた友人だったのだ。Jには彼氏がいると教えてくれたあの韓国人であった。その日の僕は無気力になり、もうほとんど誰とも話さずにサンフェルナンドの海を見つめて過ごした。
サンフェルナンドのビーチ。沈む夕日に自分の沈む心を重ね合わせたりした。
翌日の日曜日、僕はJを教室に呼びだした。素面の彼女にちゃんと気持ちをあらためて伝えたかったからだ。彼女が昨日のことをどれだけ覚えているのかはよくわからなかった。ただ僕が、好きなんだ、と伝えると驚いた様子だった。泣いた理由も訊いてみた。韓国にいる彼氏への罪悪感からだったという。なるほど。パラワンへ行く約束はあきらめることにした。その日僕らは一見円満に解散した。「あのキスは最高だったよ」「もうその事は言わないで笑」なんてジョークを交わしながら。
でも、しばらくJとは一言も話さない日々が続いた。単純に傷心だった。あんなピカチュウもう見つからないんじゃないかと僕はショックを受けていた。
インプロンプトスピーチでは引いた紙に書かれたテーマについて即興で話す。3か月目のスピーチの日、僕が引いた紙は「depression(憂うつ)」だった。「マジか、タイムリーじゃないか」と思って紙から顔を上げるとJが客席にいた。マジか・・・。その時はうまく乗り切ったけど、Jを見かけるたびに、動揺してしまうのだった。
そんなふうに時が過ぎていき、Jが帰国する日がやってきた。僕は友達と一緒に、Jが写っている複数の写真をまとめたオリジナル写真を作ってプリントし手渡した。握手して「keep in touch」とお互いに言って。お互い少し涙目になった。
いま僕は日本にいてこれを書いている。もうget overして、move onする準備がようやくできたからだ。
終